疾患について


ここでは、思春期にみられる

状態像じょうたいぞうや疾患名をご紹介します。


(1)不登校ふとうこう、引きこもり自殺企図じさつきと 

背景には、様々な精神障害や発達障害の存在が考えられ家庭環境やいじめなどの環境要因が潜んでいる可能性もあります。

以下の精神疾患が隠れていることもあるので当てはまる状態が無いかチェックしてくださいね。  

 

(2)統合失調症とうごうしっちょうしょう

思春期・青年期は統合失調症とうごうしっちょうしょうの発症が多い年代でもあります。

統合失調症は思春期に発症すると予後よごの悪い病気です。

症状を疑ったらすぐに受診しましょう。早期に治療をすることで回復が見込めます。

急に怒りっぽくなる、不安や恐怖が強くなり情緒不安定になる 

引きこもる 会話の辻褄つじつまが合わない 話しかけても反応しない 

嬉しい、悲しいといった感情が見られなくなり平坦へいたんな印象になる 

友達とうまくコミュニケーションが取れない 学力が低下する 

といったサインが前兆として見られます。

被害妄想的言動ひがいもうそうてきはつげん(みんなが自分の悪口を言っていると思う発言や行動)が増えたり、

幻聴げんちょう(本人には実際に現実に起きているように聞こえる)がみられることもあります。

しかし、これらの症状はうつなどの疾患でも見られます。

様子がおかしいと感じ、本人も困っている、本来の力を発揮できていない…と感じたら、

精神科やかかりつけのお医者さんに相談に行きましょう!

 

(3)思春期ししゅんきうつ病

症状は、やる気がでない 一日の間で気分が変わりやすい 食欲不振しょくよくふしん 睡眠障害すいみんしょうがいなどからだの症状として現れやすいです。

(大人のうつと違って、落ち込む≦怒りっぽくなる 眠れない≦眠りすぎる 食べれない≦食べ過ぎてしまう といった症状が出やすいことも!)うつ病は小学生の10人に1人、中学生以降は10人に2人と、大人と変わらない頻度で起きています。

しかし、うつ病に気づかず不登校や非行につながることもあります。

また、思春期のうつ病は再発率も高く、ほかの疾患の前兆であることも多いです。

気になったら、早めに精神科やかかりつけのお医者さん、スクールカウンセラー、保健室の先生に相談してくださいね。

 

(4)スマホ依存症いぞんしょう ゲーム依存症

スマートフォン(以下、スマホ)やゲームは依存性が高いことで知られています。

特にスマホは画面を触るだけで変化するための応答性が高く、脳はそれが大好きです。だからスマホやゲームをすることでそれらの刺激を受けることで作られるその刺激を認識する回路は、どんどん出来ていきます。

繰り返すと、より強い刺激ではないと、脳が満足しなくなってしまいます。一度作られた回路は変わりません。

しばらくやめていても、再度刺激が加わると一気にその回路は動き出し、止まらなくなってしまいます。

(よりその刺激を求めるようになっていきます)

依存が形成けいせいする(=依存症)になると治りません。

そして治療は非常に難しくなります。

 

(5)神経症性障害しんけいしょうせいしょうがい

ストレスなど心的要因によって引き起こされる精神および身体の障害の総称で、

全般性ぜんぱんせい不安障害、社会不安障害、身体表現性障害、解離性かいりせい障害などの神経症症状。強迫性きょうはくせい障害は思春期に多くみられます。 

落ち着きがない 疲れやすい 集中力が沸かない イライラしやすい 下痢 動悸どうき 頻尿 不眠 首や肩の凝り 

といった症状が出てきます。

 

強迫性障害とは…不安が頭に浮かぶと、考えないようにしても「手を洗わなければならない」という衝動的しょうどうてきな気持ちと、自分の手が汚れている!というイメージが浮かんできてしまいます。本人もやめたくてもやめられません。”手を洗う”という行為をしないと、不安がどんどん増えてしまいます。その不安に耐えきれなくなり、また”手を洗う”という行動を繰り返し、繰り返ししてしまいます(これを行動の強化と呼びます)。そして、思春期は自分の思い通りにならない現状の代わりに、

家族への「巻き込み」をすることで自分の思い通りにいくことを確認して落ち着きます。

こういった症状は対応すればする程、エスカレートするため、正しい知識を周囲が持って応対することが肝心かんじんとなります。

 

(6)摂食障害せっしょくしょうがい

最も死に近い精神疾患ともいわれておりますが、回復することも可能な精神疾患です。

身体の急激な変化こころがついていけず、異常なまでに体重を気にするようになります。

体型に対する認知の歪みゆがみが生じ、拒食きょしょくや過食かしょく・嘔吐おうとを繰り返すことで、安心を得ようとする傾向がみられます。

治療は心身両方からのアプローチが必要となります。

食事を誰とも一緒にとらなくなったり、食べ物がトイレ・流し・ゴミ箱などに捨てられていたり、逆に食べだすと止まらない、食べ物を自分の部屋に隠している、手に吐きだこがみられる…などの様子が見られたら受診しましょう。

 

栄養不足となって、

身体に障害が残ってしまう…なんて事もあるよ!


 

(7)思春期妄想症ししゅんきもうそうしょう

自分の視線・おなら・匂い・容姿が他人を不快にさせているのではないかと不安になり、

自分は嫌われている、避けられているという妄想もうそうを持ちます。

 

統合失調症とうごうしっちょうしょうの妄想との違いは、統合失調症は全く知らない人に対しても妄想を抱くのに対して、

思春期妄想症は挨拶するかどうか程度の他人に対してのみ妄想を抱きます。

 

(8)適応障害てきおうしょうがい

環境変化やストレスになる環境や出来事に対して、うつ症状や不安症状が出てきます。

 

ストレスとなる原因から解放されると3~6か月で症状は治まります。

ストレス環境が長引くとうつや神経症しんけいしょうなどの症状へ移行いこうしていくので注意が必要です。

 

思春期の場合は発達課題はったつかだいと絡んでることが多く、成人期よりも回復に時間を要することが多くみられます。

単純にストレスになっている場面を回避すれば解決する。という訳ではなく、

気を遣いすぎる・自己主張ができない等、人との関係を上手に築けないことからくる症状であることが多いため、

本人が変わらない限りその状況は繰り返されてしまうからです。

因みに思春期の発達課題は「自我同一性じがどういつせい(アイデンティティ)の確立」です。

これまで獲得してこれなかった発達課題があれば、獲得しなおしながら、親からの自立と依存を繰り返し、

社会という共同体の中に自分の居場所を見つけることで達成します。